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【自由民主号外寄稿】大阪都構想のどこがダメなのか



・都構想のどこがダメなのか

 都構想の目的は本質的に、府と市の二重行政の解消にあります。ムダを省く、このことに異論はありません。しかし、二重行政のムダは、別に都構想でなくとも、現在、設置されている「府市統合本部」で、充分できることです。なぜ、都構想でなければいけないのか、維新は明確に説明をしていません。

 仮に、都構想が実現して、広域行政を担う「都」と基礎自治体である「区」が存在し、「都」と「区」の意思決定が捻れて、新しい二重行政を産む可能性があります。5つの区が成立し、「都」がそこに加われば「6重行政」になるかもしれません。

 民主主義というものは結局、話合いと妥協なのです。大阪都になったら、救世主が現れて、何もかも解決していってくれるなどということはあり得ません。大阪都であろうと、現在の大阪府・大阪市の体制であろうと、結局、話合いをすっ飛ばして、誰かが独裁権を振るうことなどできないのです。

 都構想の制度設計がズサンであることの最大の例が財政問題を無視していることです。大阪府の借金は6兆円を超えています。大阪市は5兆円(特別会計含む)です。これだけの莫大な負債をどうやって、返すのか、経済の成長戦略なくして、借金返済はあり得ません。

 維新は都構想の経済効果は毎年4000億円と言っていましたが、それは根拠のない数字であったことが明らかになりました。府と市の年間予算規模約8兆円に対し、5%くらいの経済効果があるだろうと、いい加減な見込み計算をしていたようです。「取らぬ狸の皮算用」とは、このことです。

 都構想が仮に実現して、大阪府と大阪市の借金を「大阪都」が引き継いだ場合、今まで、二自治体が背負っていた借金を、一自治体が背負うことになり、借金の額が膨れ上がり、破綻に追い込まれます。「実質公債費比率」という指標がありますが、公明党清水義人府議によると、実質公債費比率は31.1%となり、「大阪都」は事実上、破綻自治体になってしまいます。

 大阪府は、「大阪都」の破綻を免れるために、借金の大半を、都構想によって出来た「区」に背負わせるしかない、と表明しています。そうなれば、「区」は、維新が言うような「身近な住民サービス」の提供機関ではなく、「身近な借金取り」の追い立て機関になってしまいます。「区」は借金に手足を縛られて、何もできなくなってしまいます。

 大阪都構想の設計図である「特別区設置協定書」を市のホームページで見てみると、672ページにも及ぶ「大著」です。さぞかし、綿密な制度設計が記されているのかなと思いきや、実際に、大阪都構想を規定した説明部分は20ページしか、ありません。残りの大部分は財産目録や行政施設一覧などの別表です。

 20ページの部分には漠然としたことが書かれ、都構想で大阪がどうなろうとしているのか、ということが全く、読み取れません。財源の根拠や、その具体的な数字など、何も書かれていません。別表には長期財政推計の試算が掲載されていますが、その試算の根拠は、やはり示されておらず、曖昧なものに過ぎません。

財政調整交付金などの財政調整機能については、「大阪府・特別区協議会(仮称)」において協議するとされていますが、具体的に、どのように、誰が決定するのか、肝心なことが何も書かれていません。(財政調整以前の問題として、莫大な負債を特別区にどのように振り分けていくのかも、不明。)

 現在、綿密な制度設計がなされていない状態で、都構想の提案だけが一人歩きしています。例えば、都構想の分割案において、財源を各区に、どのように配分するのか、また、その意思決定の仕組みをどうするのか、困難な調整が必要となってきます。

 綿密な制度設計が伴わない限り、都構想を見切り発射させるようなことを、責任ある政治がするべきではありません。いい加減な見切り発射で、後々、「こんなはずではなかった」ということが、必ず、生じます。その時、混乱の責任を誰が取るのでしょうか。

 都構想の設計図である大阪都構想の設計図である「特別区設置協定書」において、住之江区は、咲州を中心とする西側を「湾岸区」に、東側を「南区」に分断されます。何を根拠にそのような分断をするのか、理解に苦しみます。住之江区という単位で行政が遂行されている現在のシステムを解体するようなことをすれば、情報管理等、大きな混乱が生じます。予算執行の継続的な枠組みも崩れ、現場の混乱は避けられないでしょう。行政区は、簡単に、分断したり、くっつけたりできるようなものではありません。

 以上のようなことを一つ取っても、都構想は、財政の根拠もない、そこに生きている人間のことを考えない悪制度だと断じざるを得ません。都構想は必ず、大阪の経済を崩壊させます。

 

・「大阪府黒字化」のカラクリ

 大阪府の財政は危機的な状況にあります。大阪府の借金は史上最高額の6兆4000億円に到達しています。財政規模に対する実質的な公債費の比率を示す実質公債費比率が約19%となり、大阪府は現在、地方債発行に総務大臣の許可が必要な「起債許可団体」に陥っています。

 中長期財政見通しでは、2016年までの間に毎年、640億〜920億円の収入不足が発生すると見込まれています。また、大阪府の実質公債費比率が、2017年には25%を突破し、大阪府は起債などが制限される「財政早期健全化団体」に転落する、と指摘されています。転落すると、大阪府が自主的に予算を編成できなくなってしまいます。(減債基金の積み立て不足も深刻)
 橋下・松井両氏や維新は「大阪府黒字経営」に転換した、などと言っていますが黒字の原資が、公債発行による借金であるという事実をキチンと有権者の皆様に説明をしていません。
 自治体の財務は会社の会計のように、黒字・赤字の尺度では判断ができません。自治体は会社と違い、公債発行による借金で、帳簿上、黒字に見せることができるからです。
 大阪府の場合も、黒字の原資は借金に過ぎないのであり、まさに「見せかけの黒字経営」という他にありません。借金が増えているという事実を言わずして、「黒字経営の転換」などと喧伝する橋下氏らをはじめとする維新の人々の良識を疑います。昨今、維新のタウンミーティングでは、大ホラがエスカレートし、「大阪府を財政健全化させた」などと、明らかなるウソを言っています。呆れてモノが言えません。
 また、府民の財産である各種の行政施設などの府有財産の処分や基金の取り崩しによって捻出した資金を財政の不足に補填しています。
 この6年間に渡る維新政権において、何一つ有効な経済政策がとられず、借金ばかりが積み重なってきたという酷い事実があり、それを隠蔽するために、維新はタウンミーティングなどで「大阪府の黒字化」キャンペーンを喧伝し、有権者の皆様を誤解に陥れているのです。

 

・タコが自分の足を食う---子供教育予算の実態

 「市内の中学校、小学校にクーラーを付けた!」 橋下市長はタウンミーティングなどで、このことを繰り返し強調しています。これは事実ですから、まずもって、橋下市長には「ありがとう」と申し上げたいと思います。

 しかし、クーラー設置教育関連予算の配分に関して、実態とはかけ離れたことを、橋下市長は喧伝されておられますから、厳しく批判をせねばなりません。

 橋下市長は「67億円しかなかった子供教育予算を369億円に引き上げた」と発言されています。橋下市長が言う「子供教育予算」というのは教育関連予算の全体(2500億円程度)のなかの「その他」の項目に入る政策予算です。

 そもそも、大阪の教育現場の向上のためには、2500億円規模の教育関連予算全体が引き上げられることが望まれます。橋下市長の言う300億円規模の「子供教育予算」という「その他」の項目だけが引き上げられたとしても、2500億円規模の教育関連予算全体が引き上げられなければ、意味がありません。

 平松市政時代は、橋下市政よりも、多くの教育関連予算が例年、投じられました。平松市政時代の平成23年度、教育関連予算は2667億円でした。しかし、直近の26年度、教育関連予算は2558億円となっています。100億円近くも減額されているのです。こうした減額は、非常勤講師や補助教員の給与カットや首切り、各種の教育サポーターへの給与カットによって、捻出された減額です。

 市民の目に、見えないところで予算を削り、クーラー設置や給食予算など、市民の目に見えるところに予算を人為的に回す、という扇動政治の手法が取られています。まさに、「タコが自分の足を食う」とは、このことです。

 市民の大事な資産である各種の行政施設を、大幅に叩き切って、たった200億円程度の予算を教育現場に回して、「クーラーを付けてやった!」などと自慢して、豪語して回るなど、あまりにもケチでサモしい話ではありませんか、橋下市長。次世代投資が大事というならば、2500億円規模の教育関連予算全体を倍の5000億円規模にすればどうでしょうか。

 いずれにしても、全体の予算の話をせずに、「その他」の小さな部分だけを取り出して、「教育予算を増やしている」と言うのは詐欺に等しい言動であると断じざるを得ません。

 

・アベノミクスの恩恵を地方へ

 日銀は10月末の金融政策決定会合で、マネタリーベース目標額については「年間約80兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う」とし、従来の「年間約60兆〜70兆円」から引き上げました。
 この大規模な金融緩和に市場は反応し、株価は発表直後に大幅に値上がりしました。金融緩和政策だけで、地方経済を立て直すことはできませんが、まずは大企業が株価の上昇などを受け、業績を改善させなければ、地元の中小企業には、その恩恵は回ってきません。飛行機で例えると、先頭が上がらなければ、後部車輪も上がりません。

 2012年12月26日から始まった第2次安倍内閣において、安倍首相が経済回復、経済成長を最優先政策に掲げ、その一連の経済政策がアベノミクスと呼ばれるようになります。アベノミクスは第1に金融緩和、第2に財政出動、第3に成長戦略の「3本の矢」で構成されます。

 アベノミクスは、バブル崩壊後の20年間に渡る日本の不況の最大要因をデフレと捉え、その脱却を目指し、2%の物価上昇を目標とします。その目標が達成されるまで、日本銀行に働きかけ、無制限の量的緩和策をとります(第1の矢)。また、機動的な財政政策により、巨額の財政支出を行い、景気を刺激します(第2の矢)。規制緩和によって、「国家戦略特区」と呼ばれる経済自由開放区を創設するなどして、成長産業を支援していこうとしています(第3の矢)。

 安倍政権の発足とともに就任した日銀黒田総裁は量的緩和を行い、「バズーカー砲」と呼ばれる、その規模に市場は大きく反応しました。そして、2014年10月に再び、黒田総裁は保有残高が年間80兆円に相当するペースへの追加緩和の「バズーカー砲」を放ちました。

 量的緩和などの中央銀行の決意を示しながら、力強い経済政策を総動員することが、今の日本経済には必要なことです。インフレ2%の目標達成に向かって、無制限の量的緩和を日銀に促していくアベノミクスは日本の経済回復に、そして、大阪の経済回復にも必要なことです。

 デフレ経済から脱却し、豊かな税収を確保し、財政健全化への道筋をつけ、日本の債務返済に対する信頼を回復することも重要です。消費増税が景気に与えた悪影響は予想より大きかったように思われますが、日本の公的債務の巨大さを考えれば、やむを得ないことであります。

また、構造改革、規制緩和などにより、成長戦略を軌道に乗せて、長年染み付いたデフレマインドを払しょくする取り組みも果敢に行っているところです。